7.1 依頼,見積仕様書及び契約のレビュー
7.1.1 ラボラトリは,依頼,見積仕様書及び契約のレビューに関する手順をもつ。。この手順は,次の事項を確実にする。
a) 要求事項が十分に明確化され,文書化され,理解されている。
b) ラボラトリが,要求事項を満たすための業務能力及び資源を備えている。
c) 外部提供者を利用する場合は,の要求事項が適用され,ラボラトリが顧客に対して,外部提供者によって実施される特定のラボラトリ活動に関して通知し,顧客の承認を得る。
注記1 外部から提供されるラボラトリ活動は,次の場合に起こり得ることが認識されている。
- ラボラトリが,そのラボラトリ活動を実施する資源及び能力をもっているが,予期しなかった理由によって,その一部又は全てを実行できない場合。
- ラボラトリが,そのラボラトリ活動を実施する資源又は能力をもっていない場合。
d) 適切な方法又は手順が選択され,顧客の要求事項を満たすことができる。
注記2 内部の顧客又は定期の顧客に対しては,依頼,見積仕様書及び契約のレビューは簡素化された方法で実施することができる。
7.1.2 ラボラトリは,顧客の依頼した方法が不適切又は旧式であると考えられる場合,顧客にその旨を通知する。
7.1.3 顧客が,試験又は校正に関して,仕様又は規格への適合性の表明(例えば,合格/不合格,許容の範囲内/範囲外)を要請する場合は,その仕様又は規格及び判定ルールを明確にする。要請された仕様又は規格に当該取決めが内在する場合を除き,選択した判定ルールを顧客に伝達し合意を得る。
注記 適合性の表明に関する更なる手引について,ISO/IEC Guide 98-4 を参照。
7.1.4 依頼又は見積仕様書と契約との間での何らかの相違は,ラボラトリ活動が開始される前に解決する。個々の契約は,ラボラトリ及び顧客の双方にとって受入れ可能である。顧客から要請された逸脱が,ラボラトリの誠実さ(integrity)又は結果の妥当性に影響を及ぼさない。
7.1.5 契約からのいかなる逸脱をも,顧客に知らせる。
7.1.6 業務開始後に契約が変更される場合は,契約のレビューを繰り返す。また,全ての変更を,影響を受ける全ての要員に伝達する。
7.1.7 ラボラトリは,顧客の依頼の明確化,及び実施される業務に関連したラボラトリのパフォーマンスの監視に関して,顧客又は顧客の代理人と協力する。
注記 このような協力には,次の事項が含まれ得る。
a) 顧客固有のラボラトリ活動に立ち会うために,ラボラトリの関連する区域に正当に立ち入れるようにする。
b) 検証の目的で顧客が必要とする品目の,準備,こん(梱)包及び発送。
7.1.8 重要な変更を含め,レビューの記録を保持する。顧客の要求事項,又はラボラトリ活動の結果に関して顧客と交わした,関連する議論の記録も保持する。
7.2 方法の選定,検証及び妥当性確認
7.2.1 方法の選定及び検証
7.2.1.1 ラボラトリは,全てのラボラトリ活動に関して適切な方法及び手順を用いなければならず,また,適切な場合,測定不確かさの評価及びデータ分析のための統計的手法に関しても同様である。
注記 この規格で使用される“方法”は,ISO/IEC Guide 99 において定義される“測定手順”と同義と考えられる。
7.2.1.2 全ての方法,手順,並びにラボラトリ活動に関連する指示書,規格,マニュアル及び参照データなどの支援文書は,最新の状態で維持し,要員がいつでも利用できるようにする。(8.3 参照)。
7.2.1.3 ラボラトリは,有効な最新版の方法を用いることが不適切又は不可能でない限り,それを確実にする。必要な場合には,矛盾のない適用を確実にするため,詳細事項の追加によって方法の適用を補足する。
注記 ラボラトリ活動の実施方法について,国際規格,地域規格若しくは国家規格又は十分で簡潔な情報を含むその他の広く認められている仕様書が,そのままラボラトリの実施要員が使用できるように書かれている場合には,内部手順書として補足したり,書き直したりする必要はない。
その方法の中での操作の選択又は詳細な補足のために,追加の文書を用意する必要があり得る。
7.2.1.4 顧客が,使用する方法を指定しない場合,ラボラトリは適切な方法を選定し,選定した方法を顧客に通知する。国際規格,地域規格若しくは国家規格のいずれかにおいて公表された方法,定評ある技術機関が公表した方法,関連する科学文献若しくは定期刊行物において公表された方法,又は設備の製造業者が指定する方法が推奨される。ラボラトリが開発又は修正した方法も用いることができる。
7.2.1.5 ラボラトリは,必要なパフォーマンスを達成できることを確実にすることによって,選定した方法を導入する前にその方法を適切に実施できることを検証する。検証の記録を保持する。その方法がそれを発行する機関によって改訂される場合,ラボラトリは,必要な程度まで検証を繰り返さなければならない。
7.2.1.6 方法の開発が必要な場合,これは計画的な活動でなければならず,十分な資質を備えた,力量をもつ要員に割り当てなければならない。
方法の開発の進行につれて,顧客のニーズが依然として満たされていることを確認するため,定期的な見直しを行う。
開発計画の変更は,承認され,許可される。
7.2.1.7 全てのラボラトリ活動に関する方法からの逸脱は,その逸脱があらかじめ文書化され,技術的に正しいと証明され,正式に許可され,かつ,顧客によって受け入れられている場合に限る。
注記 逸脱に対する顧客の受入れは,契約書において事前に合意されていることもあり得る。
7.2.2 方法の妥当性確認
7.2.2.1 ラボラトリは,規格外の方法,ラボラトリが開発した方法,及び規格に規定された方法であって意図された適用範囲外で使用するもの又はその他の変更がなされたものについて,妥当性確認を行う。妥当性確認は,特定の適用対象又は適用分野のニーズを満たすために必要な程度まで幅広く行う。。
注記1 妥当性確認には,試験又は校正品目のサンプリング,取扱い及び輸送の手順が含まれ得る。
注記2 方法の妥当性確認に用いる手法は,次の事項のうちの一つ又はそれらの組合せであり得る。
a) 参照標準又は標準物質を用いた,校正又は偏り及び精度の評価。
b) 結果に影響する要因の系統的な評価。
c) 培養器の温度,分注量などの管理されたパラメータの変化を通じた,方法の頑健性の試験。
d) 妥当性が確認された他の方法で得られた結果との比較。
e) 試験所間比較。
f) 方法の原理の理解及びサンプリング又は試験方法のパフォーマンスの実際の経験に基づいた,結果の測定不確かさの評価。
7.2.2.2 妥当性が確認された方法を変更する場合は,そのような変更の影響を確定しなければならず,それらが元の妥当性確認に影響を与えることが判明した場合,新たに方法の妥当性確認を行う。
7.2.2.3 妥当性が確認された方法のパフォーマンス特性は,意図する用途に対する評価において顧客のニーズに適し,規定された要求事項に整合する。
注記 パフォーマンス特性の例には,測定範囲,精確さ,結果の測定不確かさ,検出限界,定量限界,方法の選択性,直線性,繰返し性又は再現性,外部影響に対する頑健性,又は試料若しくは試験対象のマトリックスからの干渉に対する共相関感度,及び偏りが含まれ得るが,これらに限定されない。
7.2.2.4 ラボラトリは,次の妥当性確認の記録を保持する。
a) 使用した妥当性確認の手順。
b) 要求事項の詳述。
c) 方法のパフォーマンス特性の確定。
d) 得られた結果。
e) 意図した用途に対する方法の適切性を詳述した,方法の妥当性に関する表明。
7.3 サンプリング
7.3.1 ラボラトリは,後の試験又は校正のための物質,材料又は製品のサンプリングを実施する場合,サンプリングの計画及び方法をもつ。
サンプリング方法は,後の試験又は校正結果の妥当性を確実にするために管理すべき要因を考慮する。サンプリングの計画及び方法は,サンプリングが
行われる場所で利用できる。サンプリング計画は,合理的である限り,適切な統計的方法に基づく。
7.3.2 サンプリング方法は,次の事項を記述する。
a) サンプル又はサンプリング場所の選択
b) サンプリング計画
c) 後の試験又は校正のために必要な品目を得るための,物質,材料又は製品からのサンプルの準備及び処理
注記 ラボラトリに受領された際に,7.4 に規定された更なる取扱いが必要とされる場合がある。
7.3.3 ラボラトリは,請け負った試験・校正の一部を構成する該当サンプリングデータの記録を保持する。これらの記録には,該当する場合,
次の事項を含める。
a) 用いたサンプリング手順の参照。
b) サンプリングの日付及び時刻。
c) 試料を特定し記述するためのデータ(例えば,数,量,名称)。
d) サンプリングを実施した要員の識別。
e) 使用された設備の識別。
f) 環境条件又は輸送条件。
g) 適切な場合,サンプリング場所を特定するための図面又はその他の同等な手段。
h) サンプリング方法及びサンプリング計画からの逸脱,追加又は除外。
7.4 試験・校正品目の取扱い
7.4.1 ラボラトリは,試験・校正品目の完全性並びにラボラトリ及び顧客の利益を保護するために必要な全ての規定を含め,試験・校正品目の輸送,受領,取扱い,保護,保管,保留及び処分又は返却のための手順をもつ。ラボラトリは,試験又は校正のための取扱い,輸送,保管/待機及び準備の間に品目が劣化,汚染,損失又は損傷を受けることを防止するための予防策をとる。試験・校正品目に添えられた取扱いの指示に従う。
7.4.2 ラボラトリは,試験・校正品目の明確な識別のためのシステムをもつ。この識別は,当該品目がラボラトリの責任下にある間,保持される。
識別システムは,品目の物理的な混同又は記録若しくはその他の文書で引用する際の混同が起こらないことを確実にする。識別システムは,適切ならば品目又は品目のグループの小分け及び品目の移送に対応する。
7.4.3 試験・校正品目を受領した際,規定された状態からの逸脱を記録する。品目の試験・校正に対する適性に何らかの疑義がある場合,又は品目が添えられた記述に適合しない場合,ラボラトリは,業務を進める前に更なる指示を求めて顧客に相談し,この相談の結果を記録する。顧客が,規定された状態からの逸脱を認めながらその品目の試験又は校正を要求する場合,ラボラトリは,その逸脱によってどの結果が影響を受けるおそれがあるのかを示した免責条項を報告書に含める。
7.4.4 規定された環境条件下で品目を保管又は調整する必要がある場合は,これらの条件を維持し,監視し,記録する。
7.5 技術的記録
7.5.1 ラボラトリは,個々のラボラトリ活動の技術的記録には,結果,報告並びに可能であれば測定結果及び付随する測定不確かさに影響を与える要因の特定を容易にし,元の条件にできるだけ近い条件でラボラトリ活動の反復を可能とする十分な情報が含まれることを確実にする。
その技術的記録には,日付並びに個々のラボラトリ活動及びデータ・結果の確認に責任をもつ要員の識別を含める。観測原本,データ及び計算は,それらが作成される時点において記録され,特定の業務において識別可能である。
7.5.2 ラボラトリは,技術的記録の変更について,以前の版又は観測原本に遡って追跡できることを確実にする。変更の日付,変更点の表示及び変更に責任をもつ要員を含め,元のデータ及び変更されたデータ並びにそれらのファイルの両方を保持する。
7.6 測定不確かさの評価
7.6.1 ラボラトリは,測定不確かさへの寄与成分を特定する。測定不確かさを評価する際,サンプリングから生じるものを含み,重大な全ての寄与成分を,適切な分析方法を用いて考慮する。
7.6.2 校正を実施するラボラトリは,所有する設備を含め,全ての校正に関する測定不確かさを評価する。
7.6.3 試験を実施するラボラトリは,測定不確かさを評価する。試験方法によって,厳密な測定不確かさの評価ができない場合,原理の理解又は試験方法の実施に関する実際の経験に基づいて推定する。
注記1 広く認められた試験方法が,測定不確かさの主な要因の値に限界を定め,計算結果の表現形式を規定している場合には,ラボラトリは,試験方法及び報告方法の指示に従うことによって,7.6.3 を満足しているとみなされる。
注記2 結果の測定不確かさが確立され,検証されている特定の方法に関して特定された重大な影響因子が制御されていることをラボラトリが実証できる場合,個々の結果について測定不確かさを評価する必要はない。
注記3 さらに詳しい情報については,ISO/IECGuide 98-3,JIS Z 8404-1 及びJIS Z 8402 規格群を参照。
7.7 結果の妥当性の確保
7.7.1 ラボラトリは,結果の妥当性を監視するための手順をもつ。結果として得られるデータは,傾向が検出できるような方法で記録し,実行可能な場合,結果のレビューに統計的手法を適用する。この監視は,計画し,見直す。また,適切な場合,次の事項を含めるが,これらに限定されない。
a) 標準物質又は品質管理用物質の使用
b) トレーサブルな結果を得るために校正された代替の計測機器の使用
c) 測定設備及び試験設備の機能チェック
d) 適用可能な場合,チェック標準又は実用標準の管理図を伴う使用
e) 測定設備の中間チェック
f) 同じ方法又は異なる方法を用いた試験又は校正の反復
g) 保留された品目の再試験又は再校正
h) 一つの品目の異なる特性に関する結果の相関
i) 報告された結果のレビュー
j) 試験所内比較
k) ブラインドサンプルの試験
7.7.2 ラボラトリは,利用可能で適切な場合,他のラボラトリの結果との比較によって,そのパフォーマンスを監視する。
この監視は,計画し,見直さなければならない。また,次のいずれか,又は両方を含まなければならないが,これらに限定されない。
a) 技能試験への参加
注記 JIS Q 17043 は,技能試験及び技能試験提供者に関する追加情報を含んでいる。JIS Q 17043の要求事項を満たす技能試験提供者は,能力があるとみなされる。
b) 技能試験以外の試験所間比較への参加
7.7.3 ラボラトリは,監視活動で得られたデータを分析し,ラボラトリ活動の管理に使用し,適用可能であれば,改善に使用する。
監視活動で得られたデータの分析結果が,事前に規定した処置基準を外れることが判明した場合は,不正確な結果が報告されることを防止するため,適切な処置を講じなければならない。
7.8 結果の報告
7.8.1 一般
7.8.1.1 結果は,開示する前に,レビューされ,承認される。。
7.8.1.2 結果は,通常,報告書(例えば,試験報告書,校正証明書又はサンプリング報告書)の形で,正確に,明瞭に,曖昧でなく,客観的に提供されなければならない。。また,結果には,顧客と合意し,かつ,結果の解釈に必要な全ての情報及び用いた方法が要求する全ての情報を含めなければならな
い。発行された全ての報告書は,技術的記録として保持する。
注記1 この規格の目的において,試験報告書及び校正証明書は,それぞれ試験証明書及び校正報告書と呼ばれることがある。
注記2 この規格の要求事項が満たされている限り,報告書はハードコピー又は電子的手段によって発行することができる。
7.8.1.3 顧客との合意がある場合には,簡略化した方法で結果を報告してもよい。7.8.2~7.8.7 に規定されているが,顧客に報告されなかったいかなる情報も,すぐに利用できるようにっする。
7.8.2 報告書(試験,校正又はサンプリング)に関する共通の要求事項
7.8.2.1 個々の報告書は,少なくとも次の情報を含む。ただし,ラボラトリが正当な除外の理由をもち,それによって誤解又は誤用の可能性が最小化される場合はこの限りでない。
a) タイトル(例えば,“試験報告書”,“校正証明書”又は“サンプリング報告書”)
b) ラボラトリの名称及び住所
c) 顧客の施設若しくはラボラトリの恒久的施設から離れた場所,又は関連する一時施設若しくは移動施設で実施された場合を含め,ラボラトリ活動が実施された場所
d) 全ての構成要素が完全な報告書の一部であることが分かる固有の識別,及び報告書の終わりを示す明瞭な識別
e) 顧客の名称及び連絡先情報
f) 用いた方法の識別
g) 品目の記述,明確な識別,及び必要な場合,品目の状態
h) 結果の妥当性及び適用に重大な意味をもつ場合は,試験・校正品目の受領日,及びサンプリングの実施日
i) ラボラトリ活動の実施日(期間)
j) 報告書の発行日
k) サンプリング計画及びサンプリング方法が結果の妥当性又は適用に関連する場合には,ラボラトリ又はその他の機関が用いたサンプリング計画及びサンプリング方法の参照
l) 結果が,その試験,校正又はサンプリングされた品目だけに関するものであるという旨の表明
m) 結果。適切な場合,測定単位を伴う。
n) 方法への追加又は方法からの逸脱若しくは除外
o) 報告書の承認権限者の識別
p) 結果が外部提供者から出されたものである場合は,明確な識別
注記 ラボラトリの承認なく報告書の一部分だけを複製してはならないことを規定する。表明を含めることによって,報告書の一部が前後関係から切り離されないことを保証することができる。
7.8.2.2 ラボラトリは,その情報が顧客から提供されたものである場合を除き,報告書に記載された全ての情報について責任をもつ。顧客によって提供されたデータは,明確に識別される。さらに,その情報が顧客から提供されたもので,結果の妥当性に影響する可能性がある場合には,免責条項を報告書に記載する。
ラボラトリがサンプリング段階に責任をもたない場合(例えば,試料が顧客から提供された場合)には,結果は受領した試料に適用される旨を報告書に記載する。
7.8.3 試験報告書に関する特定要求事項
7.8.3.1 7.8.2 の要求事項に加え,試験結果の解釈に必要な場合,試験報告書は次の事項を含む。
a) 特定の試験条件に関する情報,例えば,環境条件
b) 該当する場合,要求事項又は仕様に対する適合性の表明(8.6 参照)
c) 適用可能な場合であって,次のいずれかの条件を満たす場合には,測定対象量と同じ単位で表示された,又は測定対象量に対する相対値
(例えば,パーセント)で表示された測定不確かさ
- 測定不確かさが,試験結果の妥当性又は適用に関連している。
- 顧客の指示が,測定不確かさを要求している。
- 測定不確かさが,仕様の限界への適合性に影響を与える。
d) 適切な場合意見及び解釈(8.7 参照)
e) 特定の方法,規制当局,顧客又は顧客のグループによって要求されることがある追加の情報
7.8.3.2 ラボラトリがサンプリング活動に責任をもつ場合,試験結果の解釈に必要であれば,試験報告書は,7.8.5 の要求事項を満たす。
7.8.4 校正証明書に関する特定要求事項
7.8.4.1 7.8.2 の要求事項に加え,校正証明書は,次の事項を含む。
a) 測定対象量と同じ単位で表示された,又は測定対象量に対する相対値(例えば,パーセント)で表示された測定結果についての測定不確かさ
注記 ISO/IEC Guide 99 によれば,測定結果は一般に,測定の単位及び測定不確かさを含む,単一の測定された量の値で表される。
b) 測定結果に影響をもつ,校正が実施された際の条件(例えば,環境条件)
c) 測定値がどのように計量トレーサビリティをもつのかを明確化した表明(附属書A を参照)
d) 利用可能な場合,調整又は修理の前後の結果
e) 該当する場合,要求事項又は仕様への適合性の表明(8.6 参照)
f) 適切な場合意見及び解釈(8.7 参照)
7.8.4.2 ラボラトリがサンプリング活動に責任をもつ場合,校正結果の解釈に必要であれば,校正証明書は,7.8.5 の要求事項を満たす。
7.8.4.3 顧客との合意がある場合を除き,校正証明書又は校正ラベルのいずれも,校正周期に関する推奨を含んではならない。
7.8.5 サンプリングの報告-特定要求事項
ラボラトリがサンプリング活動に責任をもつ場合,7.8.2 に列挙する要求事項に加え,結果の解釈に必要な場合には,報告書は次の事項を含む。
a) サンプリングの日付
b) サンプリングされた品目又は材料の固有の識別(適切な場合,製造業者の名称,指定されたモデル又は型式,及びシリアル番号を含む。)
c) 図面,スケッチ又は写真を含む,サンプリングの場所
d) サンプリングの計画及び方法の参照
e) 結果の解釈に影響する,サンプリング中の環境条件の詳細
f) 後の試験又は校正の測定不確かさを評価するために必要な情報
7.8.6 適合性の表明の報告
7.8.6.1 ラボラトリは,仕様又は規格への適合性を表明する場合,採用した判定ルールに付随する,(誤判定による合格及び誤判定による不合格,並びに統計的仮定などの)リスクのレベルを考慮に入れた上で採用した判定ルールを文書化し,それを適用する。
注記 その判定ルールが,顧客,規制又は規範文書によって規定されている場合,リスクのレベルの更なる検討は不要である。
7.8.6.2 ラボラトリは,次の事項を明示して,適合性の表明に関する報告を行う。。
a) どの結果に対して適合性の表明が適用されるのか。
b) どの仕様,規格又はそれらの一部に適合又は不適合なのか。
c) 適用された判定ルール(要求された仕様又は規格に既に含まれている場合を除く。)。
注記 さらに詳しい情報については,ISO/IEC Guide 98-4 を参照。
7.8.7 意見及び解釈の報告
7.8.7.1 ラボラトリは,意見及び解釈を表明する場合,それらを表明する権限を与えられた要員だけがそれぞれの表明を提示することを確実にする。
ラボラトリは,意見及び解釈が形成された根拠を文書化する。
注記 意見及び解釈は,JIS Q 17020 及びJIS Q 17065 が意図している検査及び製品認証の表明,並びに7.8.6 の適合性の表明と区別することが重要である。
7.8.7.2 報告書に表明する意見及び解釈は,試験又は校正した品目から得られた結果に基づかなければならず,意見及び解釈である旨を明示する。
7.8.7.3 意見及び解釈が顧客との対話で直接伝達される場合,その対話の記録を保持する。
7.8.8 報告書の修正
7.8.8.1 発行済みの報告書を変更,修正又は再発行する必要がある場合は,いかなる情報の変更も明確に識別し,適切な場合,変更の理由を報告書に含める。
7.8.8.2 発行後の報告書の修正は,“報告書,シリアル番号(又は他の識別)の修正”という表明若しくは同等の文言を含めた,追加文書又はデータ転送という形態だけによって行う。。
そのような修正は,この規格の全ての要求事項を満たす。
7.8.8.3 完全な新規の報告書を発行することが必要な場合には,この新規の報告書に固有の識別を与え,それが置き換わる元の報告書の引用を含める。
7.9 苦情
7.9.1 ラボラトリは,苦情を受領し,評価し,決定を下すための文書化したプロセスをもつ。
7.9.2 苦情処理プロセスの記述は,いかなる利害関係者にも,要請に応じて入手可能にする。苦情を受領した時点で,ラボラトリは,その苦情が,自らが責任をもつラボラトリ活動に関係するかどうかを確認し,関係があればその苦情を処理する。
ラボラトリは,苦情処理プロセスの全ての階層において,全ての決定について責任をもつ。
7.9.3 苦情処理プロセスは,少なくとも次の要素及び方法を含む。
a) 苦情を受領し,妥当性を確認し,調査を行い,それに対応してとるべき処置を決定するためのプロセスを記述する。
b) 苦情を解決するためにとられる処置を含め,苦情を追跡し,記録する。
c) 適切な処置がとられることを確実にする。
7.9.4 苦情を受領するラボラトリは,その苦情の妥当性を確認するために必要な全ての情報の収集及び検証に責任をもつ。
7.9.5 ラボラトリは,可能な場合には,苦情申立者に対して苦情の受領を通知し,進捗状況及び結果を提示する。
7.9.6 苦情申立者に伝達される結果は,問題となっている元のラボラトリ活動に関与していなかった者が作成するか,又はレビューし承認する。
注記 これは,外部の要員によって実施することができる。
7.9.7 ラボラトリは,可能な場合には,苦情処理の終了を苦情申立者に対して正式に通知する。
7.10 不適合業務
7.10.1 ラボラトリは,そのラボラトリ活動の何らかの業務の側面,又はその結果が,ラボラトリの手順又は顧客との間で合意された要求事項に適合しない場合(例えば,設備又は環境条件が規定の限界を外れている場合,監視の結果が規定の基準を満たさない場合)に実施する。
手順をもつ。この手順は,次の事項を確実にする。
a) 不適合業務の管理に関する責任及び権限を定める。
b) 処置(必要に応じて,業務を停止する又は繰り返すこと,及び報告書を保留することを含む。)を,ラボラトリの設定したリスクレベルに基づいて定める。
c) 以前の結果に関する影響分析を含め,不適合業務の重大さを評価する。
d) 不適合業務の容認の可否を決定する。
e) 必要な場合,顧客に通知して業務結果を回収する。
f) 業務の再開を承認する責任を定める。
7.10.2 ラボラトリは,不適合業務及び7.10.1 のb)~f)に規定する。処置の記録を保持する。
7.10.3 ラボラトリは,評価によって,不適合業務が再発し得ること又はラボラトリ自身のマネジメントシステムに対する運営の適合性に疑いがあることが示された場合には,是正処置を実施する。
7.11 データの管理及び情報マネジメント
7.11.1 ラボラトリは,ラボラトリ活動を行うために必要なデータ及び情報を利用する。
7.11.2 データの収集,処理,記録,報告,保管又は検索に使用されるラボラトリ情報マネジメントシステムは,導入の前に,ラボラトリによって,ラボラトリ情報マネジメントシステム内のインタフェースが適正に機能していることを含め,機能性の妥当性を確認する。
ラボラトリ情報マネジメントシステムは,ラボラトリによるソフトウェアの設定変更又は市販の既製ソフトウェアの変更を含め,変更が行われる場合には,使用前に承認し,文書化し,妥当性を確認する。
注記1 この規格において,“ラボラトリ情報マネジメントシステム”には,電子化されたシステム及び電子化されていないシステムの両方に含まれるデータ並びに情報の管理が含まれる。要求事項によっては,電子化されていないシステムより電子化されているシステムに適用しやすくなる。
注記2 一般的に使用されている市販の既製ソフトウェアは,設計上の適用範囲において十分に妥当性が確認されているとみなすことができる。
7.11.3 ラボラトリ情報マネジメントシステムは,次の事項を満たす。
a) 無許可のアクセスから保護されている。
b) 不正な書き換え及び損失から防護されている。
c) 提供者若しくはラボラトリの仕様に適合する環境の中で運用されているか,又は電子化されていないシステムの場合は,手書きの記録及び転記の正確さを確保する条件を備える環境の中で運用されている。
d) データ及び情報の完全性を確実にする方法で維持されている。
e) システム障害及びそれに対する適切な応急処置及び是正処置を記録することを含む。
7.11.4 ラボラトリ情報マネジメントシステムが,異なる場所(off-site)で管理及び保守されているか,又は外部提供者を通じて管理及び保守されている
場合,ラボラトリは,システムの提供者又は操作者が,この規格の適用される全ての要求事項に適合することを確実にする。
7.11.5 ラボラトリは,ラボラトリ情報マネジメントシステムに関連する指示書,マニュアル及び参照データを要員がいつでも利用できることを確実にする。
7.11.6 計算及びデータ転送は,適切かつ系統的な方法でチェックを行う。
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